セットの後半、バーが手のひらに食い込んで痛い。手首も後ろに倒れそうで怖い。
そんなとき、隣でパワーグリップを巻いてベンチプレスをしている人を見ると、「自分も使ったほうがいいのかな」と迷ってしまうものです。
私も先日、ジムでその使い方を初めて見かけました。トレーナーの私でも知らなかったので、調べて、実際に試してみました。
結論から言うと、パワーグリップは使っても構いません。
ただ、手のひらや手首の痛みは、道具で対処するものではなく、体がまだその重さに対応しきれていないサインです。
結論:使ってもいい。でも体の使い方が先
パワーグリップを使うこと自体は、悪いことではありません。
問題なのは、道具に頼りきりになって、道具がなければできない状態になってしまうことです。
大切なのは順番です。まずは道具なしでできる体の動きや、効率的な力の使い方を身につける。ギアを使うのは、その先で構いません。
悩める人ベンチプレスでも、パワーグリップって使ったほうがいいんですか?



使っても大丈夫ですよ。ただ、頼りすぎると、道具がないとできない体になってしまいます。まずは体の使い方から覚えていきましょう。
ちなみに私自身は、ベンチプレスでパワーグリップは使いません。
手のひらや前腕にかかる負荷も含めて、トレーニングだと考えているからです。
そもそもパワーグリップとは?
パワーグリップがどんな道具で、なぜベンチプレスで使う人がいるのかを整理しておきます。
本来は背中トレの道具
パワーグリップは手首に巻きつけて使うトレーニングギアです。ベロと呼ばれる部分をバーに巻きつけることで、握る力を助けてくれます。ラットプルダウン、懸垂、ローイングのような、バーを引っぱる背中の種目で使うのが一般的です。
私の場合、パワーグリップを使うのはデッドリフトという種目だけです。それも100㎏を超えてからしか使いません。
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体づくりでも基本的には道具に頼らない考え方なので、補助的なギアはほとんど使いません。
ベンチプレスで使う人がいる5つの理由
調べてみると、ベンチプレスでパワーグリップを使う目的は、主に次の5つのようです。


- バーを滑りにくくするため
- 握力をなるべく使わずに、胸に集中するため
- 手首への負担を減らすため
- 手のひらへの負担を減らすため
- マメを防ぐため
なるほど、理屈は分かります。
メリットがあるのかもしれない。気になったら試したくなるのが私の性分です。
実際に試して感じた一枚の空間
いつもの重量、いつものフォームのまま、パワーグリップをバーと手のひらの間にはさんで挙げてみました。
滑らない。でも力が伝わりきらない
滑り止めの効果は、たしかにあります。バーが手の中でズレることはありません。
ただ、最初に感じたのは違和感でした。手のひらとバーベルの間に、一枚の空間がはさまっている感覚があったのです。
ベンチプレスは、全身を連動させて作った力を、最後にバーベルへ伝える種目です。
その最後の最後で、力を伝えきれない感覚がありました。慣れの問題もあるかもしれません。



滑り止めにはなるけど、手のひらとバーの間に一枚空間ができる感じ。全身で作った力が、最後にバーへ伝わりきらないんです。
手のひらの感覚を繊細に使いたい
私の場合バーベルを握るという感覚では扱っていません。
手のひらの中で、てこを使ってバーを噛ませるような使い方をしています(このやり方は、いずれ別の記事でくわしくまとめる予定です)。
この手のひらの感覚を繊細に使いたいのですが、パワーグリップがあると、それがとてもやりにくくなります。
そもそも、私はベンチプレスでパワーグリップを使ってこなかったですが、バーが滑ったことはありません。
マメも基本的にはできません(手の皮は厚くなります)※週5回ほぼ毎日筋トレしています。


手や手首の痛みは体がまだ慣れていないサイン
バーを握る手のひらが痛い。手首に負担がかかっている気がする。
そう感じたとき、私は扱っている負荷に、体がまだ順応していない証拠だと捉えています。
そして、それも含めてトレーニングだと考えています。
くり返すうちに痛みは感じにくくなる
バーが当たる手のひらの痛みは、ベンチプレスをくり返し行っているうちに、自然と感じにくくなってきます。
手首も同じです。いま扱っている100kgや120kgも、初めて持ったときは、手首も手のひらも体全体も軋むようで、とてもつらく痛かったのを覚えています。
それでも、くり返すうちに負担は感じにくくなっていきました。
もちろん、ありえないぐらい重い負荷を持てば、私でも手首は痛みます。


強くなるのは筋肉だけではない
筋トレは、筋肉を強くするためにするものだと思います。
でも、強くなるのは筋肉だけではありません。
神経も、骨も、そして表面の皮膚も、その重さに適応して強くなっていく。私はそう考えています。
続けていれば強くなれるのに、そこに道具が入ることで、その強くなる機会を失ってしまう。
これが、私がギアに頼りすぎることをおすすめしない理由です。
道具を使うと適切な負荷が分からなくなる
もうひとつの問題は、道具を使うと、自分に合った負荷なのかどうかが分かりにくくなることです。
ギアがなければ扱えない重さでも、ギアを使えば扱えてしまうからです。
いま体のどこかに不具合を感じている方は、「この負荷に適応するだけの力が、まだ足りていない」と判断してみてはいかがでしょうか。
道具に頼る前に、重量や握り方、フォームを見直してみてください。
鋭い痛みが走る、痛みが何日も引かない、腫れているといった場合は、慣れの問題ではなくケガの可能性があります。無理をせず、医療機関で診てもらってください。



ベンチプレスをすると、手のひらが痛くなるんです……。



それは、体がまだその重さに慣れていないサインかもしれません。道具に頼る前に、重さや握り方、フォームを見直してみましょう。
道具より先に体の使い方を身につけてほしい
ギアを使う目的と、使う順番について、私の考えをお伝えします。
ギアの目的は体の負担を抑えて安全に鍛えること
私の考えでは、トレーニングギアを使う目的は、肘や手首にかかる負担を減らすことです。
体への負担を最小限に抑えながら、安全にトレーニングをする。そのための道具だと思っています。
ただ実際には、道具が先で、体の動きや効率的な力の使い方、フォームが後回しになっているように感じます。
そもそも、ギアを使わなければトレーニングができないほど、体に負荷をかける必要はないと私は思います。


一般の方こそまずは体の動きを身につける
体づくりや健康のため、スポーツのパフォーマンスを上げるために筋トレをしている一般の方は、なおさらです。
ギアに頼らずにできる体の動きや、効率的な体の使い方を学ぶほうが先です。
それを身につけたうえで、どうしても体の負担を減らしたいときにギアを使うのは、私も賛成です。
それでも私がリストラップだけは使う理由
私もすべてのギアを使わないわけではありません。
手首だけは保護したほうがいいと判断したため、ベンチプレスで100kgを超えたぐらいからは、必ずリストラップを付けています。
手首を守るなら、パワーグリップよりもリストラップのほうが向いています。
手のひらの感覚を残したまま、手首だけを固定できるからです。
ちなみに、私が使っているのはRDXのリストラップです。競技用として認められている商品で、フィット感があり、手首をがっちり固定できます。
手首がとても安定するので、安心してトレーニングができます。何より、見た目がかっこいいのも気に入っています。
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ただし、大会ごとにルールは違います。大会への出場を考えている方は、その点をしっかり調べてください。
ただし、リストラップがなくてもベンチプレスはできます。先日120kgを挙げたときも、リストラップなしで問題なくできました。
あくまで補助として使っているぐらいの感覚です。私のちょっと変なプライドなのですが、基本は「ノーギア」です。
150kgを超える世界は別の話
150kg、200kg、300kgといった、とてつもない負荷を扱うなら、道具が必要になる可能性もあるのかもしれません。
私はまだその領域に行っていないので、正直なところ分かりません。
ただ、言えることは120kgまでは、道具に頼らなくても、安全に体の負担を減らしながらベンチプレスの重量を伸ばしていけます。
おまけ:ベンチプレスの大会ではパワーグリップは使える?
私自身は大会に出場するわけではないのですが、大会を目指している方向けの、ちょっとした情報です。
大会はノーギアとフルギアに分かれている
ベンチプレスの大会は、「ノーギア」と「フルギア」の2つのカテゴリーに分かれています。
ノーギアは、ふだんジムで行うベンチプレスに近いものです。Tシャツで行い、身につけてよい道具は、リストラップとベルトくらいです。
フルギアでは、それに加えて「ベンチシャツ」という専用のシャツを着ることができます。
とても硬い素材でできていて、着ると腕が前に固定されたような状態になります。ある程度の重さがないとバーが胸までつかないほどで、その強い反発を利用して、ノーギアよりも重い重量を挙げられます。
この2つは、まったく別の競技です。全国大会もノーギアは「ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会」、フルギアは「全日本ベンチプレス選手権大会」と分かれていて、記録も別々に残されています。
YouTubeで見かける「ベンチプレス300kg」「400kg」といった動画は、たいていフルギアのものです。
どちらのカテゴリーにもパワーグリップは入っていない
日本パワーリフティング協会や国際パワーリフティング連盟のルールでは、大会で使ってよい道具が決められています。
ノーギアならリストラップやベルト、フルギアならそこにベンチシャツが加わる形です。
その中に、パワーグリップは入っていません。
つまり、ノーギアでもフルギアでも、大会ではパワーグリップは使えないということです。



大会に出るなら、パワーグリップは使えないんですね。



そうなんです。ノーギアでもフルギアでも、使ってよい道具の中に入っていないんです。
参考
公益社団法人日本パワーリフティング協会「ルールブック」
国際パワーリフティング連盟(IPF)「Technical Rules」
よくある質問
ベンチプレスとパワーグリップについて、よくある質問にお答えします。
まとめ
パワーグリップは、必要に応じて使っても問題ありません。
ただ、頼りすぎると、正しいフォームや力の伝え方が分からなくなり、自分に合った負荷も見えにくくなります。
手や手首の痛みは、体がまだその重さに慣れていないサインです。
くり返すうちに、筋肉だけでなく、神経も骨も皮膚も強くなっていきます。
道具は、その機会を奪ってしまうことがあります。
まずは道具なしでできる体の使い方を身につけ、そのうえで必要ならギアを使う。この順番が大切です。
手首が心配なら、パワーグリップよりもリストラップがおすすめです。
また、ベンチプレスの大会では、ノーギアでもフルギアでもパワーグリップは使えません。
120kgまでなら、道具に頼らなくてもベンチプレスは伸ばせます。フォームや力の使い方を考えながら、トレーニングを続けてみてください。










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