ドライバーの飛距離が伸びない本当の理由|アッパーブローができないのは打ち方より体の使い方の問題

体格はそれほど変わらない同伴者に、ドライバーだけ20ヤード以上置いていかれる。

「アッパーブローで打って」と言われても何を変えればいいか分からず、すくい打ちを意識したらかえってスライスやチョロが増えた。

こうした経験はないでしょうか。

先に結論をお伝えします。アッパーブローは、手先でボールを「すくう」ことではありません。

構え・股関節・体幹の使い方、特に力を抜くタイミングの結果として、自然にできあがるものです。

これは前回・前々回の記事でお話しした「体の使い方の効率」「捻られても崩れない力」が、ドライバーというクラブ特有の条件のもと表れた姿だと捉えています。

悩める人

アッパーブローって言われても、正直何をすればいいのか分かりません…

リオン

実は「アッパーブローで打とう」と意識すること自体が、逆効果になりやすいんです。今日はその理由からお話しします。

目次

ドライバーだけ飛ばないというよくある悩み

アイアンはそれなりに飛ぶのに、ドライバーだけ思ったように距離が出ない。

この悩みは、実はドライバーというクラブの特殊さに理由があります。

アイアンは、ボールの手前から地面をこすりながら(ダウンブローで)打つことを前提に作られたクラブです。

ところがドライバーは、地面ではなくティーの上のボールを、できるだけ上向きの軌道で捉えることを前提に設計されています。

つまり、アイアンとドライバーでは、そもそも「良いインパクト」の形が違います。

同じスイングのつもりで振っていても、ドライバーだけ結果が伴わないのは、ある意味で自然なことなのです。

飛距離を決めているのはヘッドスピードだけではない

飛距離というと、多くの方が「ヘッドスピードを上げること」を思い浮かべます。

もちろんヘッドスピードは大切な要素ですが、それだけで飛距離が決まるわけではありません。

打ち出し角とスピン量の組み合わせでキャリーは変わる

同じ強さでボールを打ち出しても、ボールがどんな角度で飛び出し、どれくらい回転しているかによって、キャリー(落下地点までの距離)は変わります。

たとえば、ヘッドスピードが同じくらいの方同士でも、入射角(打ち出しの角度に直結する要素)が5°違うだけで、キャリーが20〜24ヤードほど変わるという計測データがあります。

決して大げさな数字ではなく、多くのアマチュアの方に実際に起こりうる差です。

理由はシンプルです。スピン量が多すぎると、ボールが空気の抵抗を強く受けて、途中で吹き上がるように失速してしまいます。

反対に、スピンを抑えつつ最初から高い角度で打ち出せると、抵抗が少ないまま伸びる弾道になり、着地してからの転がりも稼ぎやすくなります。

「高く打ち出して、あまり回転させない」

この組み合わせが、ドライバーにとって効率の良い飛ばし方だといえます。

多くのアマチュアが損しているダウンブローの実態

では、実際のアマチュアゴルファーはどうなっているのでしょうか。

計測器メーカーのデータを見ると、男性アマチュアの入射角(クラブが上下どちらに動きながらボールを捉えているか)は平均で−1.6°、つまりインパクトの瞬間にまだクラブが下向きに動いているダウンブローの状態にあることが分かっています。

ちなみにPGAツアーの男子プロでも平均−0.9°とわずかにダウンブロー寄りですが、LPGAツアーの女子プロは平均+2.8°とアッパーブローになっており、ヘッドスピードが同じくらいでも入射角の違いだけで飛距離に差がついていることがうかがえます。

ダウンブローで打つと、クラブのロフト(角度)が実際よりも寝てボールに伝わり、ボールが強くこすれる形になるため、スピン量が増えやすくなります。

スピン量が増えれば、先ほどお伝えした「吹き上がって失速する」現象が起きやすくなり、せっかくのヘッドスピードを飛距離に変えきれなくなります。

反対に、クラブが上向きに動きながらボールを捉える「アッパーブロー」の状態を作れると、スピン量を抑えたまま高い打ち出し角を確保しやすくなり、同じヘッドスピードでも数十ヤード単位で飛距離が変わってくることがあります。

ここに、多くのアマチュアが気づかないまま損をしているポイントがあります。

  • 飛距離は打ち出し角とスピン量の組み合わせで決まり、入射角5°の差でキャリーが20〜24ヤードほど変わる
  • 男性アマチュアの多くはダウンブロー傾向(平均−1.6°)で、この差のぶん飛距離を損しやすい

なぜドライバーはダウンブローになってしまうのか

「じゃあアッパーブローで打てばいいのか!」と思われたかもしれませんが、「アッパーブローで打とう」「すくい打ちしよう」と手先で意識するほど、かえってうまくいかないことが多いものです。

ダウンブローになりやすい方の多くには、共通する根っこがあります。トップからダウンスイングにかけて、腕で「振りにいこう」としてしまうこと、言い換えれば力を抜くタイミングを作れていないことです。

腕に力を入れたまま動かし続けると、体の回転より腕の動きが先行し、クラブが最短距離で落ちようとするため、最下点が手前に来てダウンブローになりやすくなります。

構えの影響もゼロではありません。

ボール位置や体重配分が目標方向に寄りすぎていると、それだけで最下点が手前に来やすくなります。

ただし構えを整えるだけで解消しきらない場合、力の抜きどころに問題が残っていることが多いです。

切り返し以降の突っ込みや股関節・背中上部の硬さも、多くの場合はこの腕で振りにいく=脱力できていない状態から二次的に起きています。

個別に直そうとするより、まず腕で振りにいく感覚を手放すほうが近道になることが多いと感じています。

次の章で、その具体的な考え方をお伝えします。

アッパーブローは手先の技術ではなく体の使い方の結果である

ここからが今回、一番お伝えしたいところです。

アッパーブローは打ち方のコツではなく、体の使い方、特に力を抜くタイミングが整った結果として生まれるものです。

この体の使い方は、①②の記事でお伝えしてきた内容とそのままつながっています。

スイングは弓矢を放つ動きによく似ている

私は、ゴルフに限らずスポーツの動作の多くは、根本的には「弓矢で矢を放つ動き」に近いと考えています。

この例えは私だけの感覚ではなく、名ボールストライカーとして知られるモー・ノーマン選手も「体は弓、腕は矢だ」と語っていたと伝えられていますし、日本の星野陸也プロについても、片山晋呉プロが解説する動画の中で、そのバックスイングが「弓を引いて力を溜める動き」と紹介されています。

弓は、引き切ったところで手を離すからこそ矢が勢いよく飛び出します。

ドライバーのスイングも同じ構造で、テイクバックが弓を引く動作、トップは引き切って力を拮抗させている状態、切り返しからダウンスイングが手を離す瞬間にあたります。

トップまではある程度の力で体を引っ張り続けて構いません。

問題はその先、切り返しの瞬間に腕や上半身の力をふっと抜けるかどうかが、軌道を大きく左右します。

悩める人

弓矢って、なんとなくイメージしやすいですね。

リオン

トップで力をためて、切り返しで一気に抜く。ゴルフのスイングも実は同じ構造なんです。

もし切り返しで体の回転が一切なければ、トップの位置から腕はただ真下に落下するだけです。

ここに、非利き手側(目標方向側)の股関節を引き込む回転が加わることで、腕やクラブが後ろから引っ張られてくるように動き、まっすぐの落下運動が弧を描く回旋運動に変わり、クラブが上向きの軌道でボールを迎えることにつながります。

この役割は、以前の記事でお伝えした左右非対称な動き、つまり利き手側と非利き手側が違う役割・タイミングで動くという考え方と、そのままつながっています。

利き手側が支え続けるから脱力しても軌道が崩れない

「力を抜く」と聞くと体全体の力をなくすイメージを持たれるかもしれませんが、それは「脱力」ではなく「無力」です。

無力とは、全身の力が抜けて緩みきった状態のことで、この状態では体を支えられず、姿勢が崩れてしまいます。

私たちが指導で使う「脱力」は、「入るべきところに力を入れ、抜くべきところを抜く」という技術です。

レッスンプロの小松拓夢さんも「脱力とは力を全く入れないことではなく、力を入れるべき部分にしかるべきタイミングで入れる、メリハリの効いた状態」だと説明しており、私の考えと重なります。

悩める人

力を抜くって、脱力しきることだと思ってました…

リオン

そこ、誤解されやすいポイントです。体幹はむしろ力を入れたまま、腕だけ抜くのがコツですよ。

これはゴルフに限らず、野球のバッティングやピッチングなど、道具や腕を通じて力を伝える動作全般に共通します。

ドライバーのスイングでも脱力するのはあくまで腕や手先であり、体幹はむしろ力を入れて支え続けるべき部分です。

体幹まで緩めてしまうと無力に近づき、軸がぶれてしまいます。

ダウンスイングからインパクトにかけては、利き手側の背中の筋肉が働いて体幹をわずかに傾けたまま保ち続けます。

腕は脱力して振られるままにしながら、体幹は支え続ける。

この役割分担があることで、脱力しても軸がぶれず、股関節の回転から生まれた勢いがそのままクラブに伝わっていきます。

これは、前回の記事でお伝えした「捻られても崩れない力」と根っこが同じです。

ヘッドスピードは終始速いのではなく瞬間的に速いことが大事

飛距離というと、スイング全体を素早く振ることをイメージされがちですが、大事なのはそこではありません。

腕に力を入れたまま最初から最後まで振り切ろうとすると、動き自体は速く見えても、インパクトの瞬間に「これ以上ない加速」を生み出せていないことが多いのです。

弓矢も手を離した瞬間だけ一気に加速するように、トップまでは力を使って引っ張り、切り返しの一瞬で力を抜くからこそ、インパクト付近でヘッドスピードが跳ね上がります。

終始力を入れて速く振ろうとする振り方では、この瞬間的な加速が生まれにくく、飛距離が伸びない、あるいは安定しない原因になりやすいと感じています。

リオン

「アッパーブローで打とう」「すくい上げよう」と考えるのではなく、トップでいったん力をため、切り返しの瞬間にふっと力を抜く。この練習を積むと、結果としてアッパーブローの軌道に近づいていく方が多いです。

POINT

アッパーブローは、狙って作るものではありません。トップで力を保ち、切り返しの瞬間に力を抜く。その脱力によって股関節の回転が腕を引っ張り、体幹が軸を支え続ける。この一連の流れが整ったときに、結果として生まれる軌道です。

⚠️ 注意

これまで腕でしっかり振りにいくスイングに慣れている方が、急に大きく力を抜こうとすると、一時的に当たり損じが増えたり、タイミングが取りづらくなったりすることがあります。素振りやハーフスイングなど、負担の少ない範囲から少しずつ試していただくことをおすすめします。

今日から見直せるチェックポイント

体の使い方を根本から変えるには①②の土台づくりが欠かせませんが、今日からでも見直せるポイントがいくつかあります。

  • ボール位置・体重配分:中心よりやや利き手側寄りにボールを置き、体重も利き手側の脚にやや多め(5〜6割程度)に乗っているか
  • ティーの高さ:ドライバーヘッドの半分より上にボールが出るくらいの高さにすると、アッパー軌道で捉えやすくなります
  • 素振りでの脱力練習:トップでいったん力をため、切り返しの瞬間に「ふっ」と腕の力を抜く感覚を、ゆっくりとしたスイングで確認してみる

いずれも一度で完璧にできるものではありません。一つずつ確認していくくらいの気持ちで取り組んでいただくのがおすすめです(脱力の練習で当たり損じが増えやすい点は、前章でお伝えした通りです)。

ティーの高さは、目盛りなどで毎回同じ高さに揃えられるタイプを使うと、感覚のブレを減らしやすくなります。5段階で高さを調整でき、打ち出し方向のアライメントにも使えるタイプもあるので、道具の力を借りるのも一つの方法です。

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道具でできること

体の使い方以外に、道具からアプローチできることもあります。フェースのスイートスポットよりわずかに上でボールを捉えると、「縦のギア効果」によりスピン量が減り打ち出し角も上がりやすくなります。

クラウン部に異素材を組み合わせた構造を持つあるモデルの技術検証では、打点をやや上げることで打ち出し角が約1.5°高くなり、スピン量が約500回転少なくなるという結果が確認されています。先ほどのティーの高さの見直しは、この打点を上げる工夫の一つです。

また、シャフトやヘッドの特性も打ち出し角・スピン量に影響するため、体の使い方を整えたうえでまだ物足りない段階に来たら、クラブフィッティングで自分のスイングに合った診断を受けるのも一つの選択肢です。

ただし道具はあくまで上乗せであり、体の使い方を後回しにすると効果は限定的になりやすい点は知っておいていただきたいと思います。

ここまでお伝えしてきた入射角や打ち出し角は、感覚だけで判断するのは難しい数値です。実際に自分の数値を確認したい場合は、計測器が備え付けられたインドア練習場を利用するのも一つの方法です。

たとえばFiT24インドアゴルフは、飛距離・打ち出し角・スピン量に加えて、ハイスピードカメラでインパクト時のフェースの向きや入射角まで確認できるシミュレーターを導入しており、24時間セルフで利用できる手軽さもあります。

自宅で数値を確認したい方には、計測器を一台持っておくという選択肢もあります。

まずは手軽に試したい方には、スイング解析とGPSナビが一体になったポケットサイズのデバイス(クラブスピード・ボールスピード・飛距離を計測)が、価格も抑えめで始めやすいと思います。

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もう少し本格的に打ち出し角やスピン量まで追い込みたい方には、ドップラーレーダーセンサーを搭載したポータブルローンチモニターもあります。

価格は上がりますが、打ち出し角・バックスピン量まで細かく計測できるため、今回お伝えした内容を数値で確認しながら練習したい方には向いています。

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まとめ|①②の土台があるからこそ、アッパーブローが機能する

ドライバーの飛距離が伸びない理由は、ヘッドスピード不足だけでなく、多くの場合「ダウンブロー」という軌道の問題にあります。

そして、その軌道は「アッパーブローで打とう」「ダウンブローをやめよう」と手先で狙って直すものではなく、トップで力を保ち、切り返しの瞬間に力を抜く、その脱力が身についた結果として変わっていくものだと考えています。

  • 飛距離はヘッドスピードだけでなく、打ち出し角とスピン量の組み合わせで変わる。多くのアマチュアはダウンブロー傾向にあり、そのぶん損をしている
  • ダウンブローの根っこは、腕で振りにいこうとして力を抜くタイミングを作れていないこと。構えの乱れや切り返しの突っ込みは、その結果として起きていることが多い
  • スイングは弓矢を放つ動きに似ている。トップで力を保ち、切り返しの瞬間に力を抜くことで股関節の回転が腕を引っ張り、アッパーブローの軌道につながっていく
  • 「脱力」は全身の力を抜く「無力」とは違う。体幹には力を入れたまま、腕(特に手先)だけを抜く技術のこと。利き手側の体幹が支え続けるからこそ、脱力しても軸が崩れない(「捻られても崩れない力」=前回の記事の内容)
  • 「アッパーブローにしよう」と狙うのではなく、まず脱力を身につけること。それが結果として軌道を整え、ヘッドスピードも「終始速い」より「瞬間的に速い」ことが大事になる
  • 道具(打点・フィッティング)は、体の使い方が整ったうえでの上乗せとして活用する

前々回の記事では「体の使い方の効率」という力の生み方・伝え方を、前回の記事では「捻られても崩れない力」という体幹の役割をお伝えしてきました。

今回お伝えした「アッパーブロー」は、その2つが実際のスイングの中でかみ合ったとき、つまり脱力によって股関節の回転が生きたときに、打ち出し角やスピン量という数値として表れた結果です。

①②でお伝えした土台に取り組んできた方ほど、今回の内容が体感として腑に落ちやすいはずです。

  • アッパーブローを直接狙うのではなく、まず素振りで「トップでためて、切り返しでふっと抜く」脱力の感覚をつかむ
  • 脱力させるのは腕や手先だけ。体幹はむしろ力を入れて支え続けることを意識する
  • ①②で伝えた「体の使い方の効率」「捻られても崩れない力」という土台があってこそ、今回の内容が生きてくる

参考文献

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