「〇〇くん、センスあるよね」
練習の帰り道、ほかの親御さんのそんな会話が耳に入ってくる。
同じ時期にチームに入った子は、もう試合に出て活躍している。
うちの子はたまにしか試合に出ず、打席に立ってもバットにボールがかすりもしない。
「もっと素振りをしたら?」「もっと練習をしたら?」と声をかけても、「遊びに行ってくる!!」と野球そっちのけ。
わが子の背中を見ながら、つい思ってしまう。「うちの子には、センスがないのかもしれない」と。
あなたにも、こんな気持ちになったことはありませんか?
先にお伝えしておきます。センスと才能は、まったくの別物です。そして、センスはあとから育てていけるものです。
悩める父周りの子と比べて、うちの子はセンスがないのかなって、心配になるんです…



その気持ち、よく分かります。でも、センスと才能は別物なんです。まずはそこから整理していきましょう。
センスと才能は別物です
「センスがある」と「才能がある」。
ふだんはほとんど同じ意味で使われていますが、この2つを分けて考えると、わが子の見え方がかなり変わってきます。
才能はあとから手に入らないもの
才能というのは、もともとの運動能力の高さや、体の大きさのように、あとから努力しても身につけられないもののことです。
ここには、はっきりと個人差があります。それは認めたうえで、話を進めます。
センスはできない理由と直し方が分かっていること
では、センスとは何か。私は、何かができなかったときに、なぜできないのか、どうすればできるようになるのかが分かっていることだと考えています。
ひと言でいえば、対処のしかたを知っている、ということです。
たとえば、フライがなかなか捕れない子がいたとします。ボールから目を離してしまうのか、落ちてくる場所に入るのが遅いのか。
原因が違えば、直し方もまったく違います。センスのある子というのは、自分がどこでつまずいているのかに気づけて、どうすれば直るかを感覚的に知っている子のことです。


そもそも、最初から思いどおりにできる子はいません。投げる、捕る、打つ、走る。野球は覚えることが山ほどあるので、なおさらです。
いまセンスがあると言われている子も、スタートはみんなと同じできないからです。
才能は、運動能力や体の大きさのように、あとから手に入らないもの。センスは、できない理由と直し方が分かっていること。センスは生まれつきではありません。
センスは目に見えない考え方から育つ
打てない、投げられない。野球をしていると、悩む場面はたくさんあります。
そしてどうしても、打てたか、打てなかったかという目に見える結果で判断しがちです。
YouTubeを見たり、コーチに教わったりしても、「これをやったから打てるようになった」という表面の話で終わってしまう人は、とても多いように思います。
大事なことは目に見えない部分にある
パーソナルトレーナーとして、体の仕組みやパフォーマンスの上げ方を学ぶなかで感じるのは、大事なことほど目に見えない部分にある、ということです。
それが考え方です。本人はこう考えて体を動かしているつもりでも、周りから見るとまったく違う動きに見えている。そんなことは珍しくありません。



打てた・打てないより、どう考えて振ったのかのほうが、ずっと大事なんです。
指導しようとすると人は伸びない
坪田信貴さんの『才能の正体』に、そんな一文があります。
才能の芽は誰にでもあり、伸ばすのに必要なのは、いまを知ること、やる気、そして正しい努力。私の考えるセンスと、ほぼ同じです(坪田さんの言う「才能」は、この記事のセンスに近いものです)。
これは、私の場合も本当にそうでした。父も野球をやっていたので、あれこれ言われましたが、「わかってるよ!」「うるさいなぁ!」と言って、まったく話を聞いていませんでしたから。
親はどうしても、「こうなってほしい」「ああなってほしい」と、いろいろ調べて伝えたくなります
でも、それをいくら伝えても、子どもにはほとんど響きません。
それより、打てない子、投げられない子、ボールが捕れない子がいたら、その子がどう考えてプレーしているのかを、しっかり聞いてあげてほしいと思います。
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聞いてくるまで待つ
トレーナーになったいまでも、私は自分の子どもに、体のことや指導はほとんどしていません。
ただ、教えるときはあります。子どもから聞いてきたときです。それまでは、こちらからは何もしません。



でも、つい口を出したくなっちゃうんですよね…



分かります。だからこそ、聞いてきたときが教えるタイミングなんです。それまでは、ぐっとこらえて見守りましょう。
何もせずに待つのは、実はとても難しいことです。
私の人生が変わったときに紹介してもらった、帚木蓬生さんの『ネガティブ・ケイパビリティ』は、答えの出ない状況に耐える力についての本です。
大人はつい、あれこれ手を出したくなる。何もせずに耐えることの大切さを教えてくれる一冊です。
そのかわり、聞かれたときに正しく答えられるよう、親は考え方を学んでおく。それが、親にできる準備だと思います。
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自分から助言を求める力を育てる
スポーツでも、勉強でも、日常生活でも、能力が落ちてしまう人に多いのが、人に助言を求められないというパターンだと、私は思います。
周りからあれこれ言われ続けていると、聞かなくても教えてもらえるものだと、勘違いしてしまうのかもしれません。
大人になっても、悩んでいることや分からないことを人に聞けない人は、たくさんいます。
自分へのプライドなのか、劣等感なのか。そういったものを感じてしまっているのかもしれませんね。
自分から人に助言を求められること。少年野球で野球がうまくなることよりも、私はそちらのほうが大切だと思います。


子どもは、いずれ社会人になり、ひとりで成長していかなければならなくなります。
そのとき、自分の考え方に固執するのではなく、周りの考えや意見を自らつかみにいき、それを活かして成長できるか。
そういう力を小さいうちから鍛えるという意味で、スポーツはとても大きな役割を果たすと思います。
スポーツをやっていると、必ず壁にぶつかります。勉強でも恋愛でも同じですが、いまの自分の力では越えられない壁に、必ずぶつかる。
そんなときに必要なのが、周りに助言を求める力です。
野球センスのある子とは、どんな子なのか。私は、分からないことやできないことを、周りの人に助言を求められる子だと思っています。
ただ、これは子どもにとって、かなり難しいことだと思います。だからこそ、親はそのときが来るまで、じっと待つことがとても大切なのです。
親にとっても子どもにとっても、大変で難しいことですが、子どもとともに親も成長できる機会なのではないかと、私は考えています。
センスのある子は楽しさを見つけられる子
センスについて、もうひとつ大事なことがあります。いまやっていることに、楽しさを見つけられるかどうかです。
これは大人になっても同じだと思います。
少年野球はとにかく楽しむのが一番
少年野球の時期に、「量より質」だとか「質より量」だとか、そういう考え方を持たせる必要はないと思っています。
それよりも、とにかく野球を楽しんでもらうこと。それが一番です。
楽しさがないと続かない
楽しさがないと、結局続きません。私の場合がそうでした。続けること自体が、実はいちばん難しいのです。



楽しいから続く。続くから、うまくなる。少年野球は、まず楽しむことからです。
センスがないと感じても焦らなくていい
センスが「対処のしかたを知っていること」だとしたら、いまできないのは、まだ知らないだけ、とも言えます。
できない理由や直し方は、続けていくなかで少しずつ分かっていくもの。
生まれつきの才能と違って、センスはここから育てていけます。
人にはそれぞれのペースがある
桑田真澄さんの『心の野球 超効率的努力のススメ』にある、私の好きな話です。
15歳で甲子園で活躍した桑田さんでさえ、人と単純に比べてはいけない、人にはそれぞれのペースがある、と書いています。
早く花開いて消える選手もいれば、遅れて伸びる選手もいる、と。
私も、そう思います。プロや社会人野球を目指してはっきりした目標があるなら話は別ですが、少年野球の子どもは、たぶんそこまで考えていません。
中学や高校で本当に才能がある子なら、周りが黙っていても、自然とそちらへ進んでいきます。
それに、学生時代に野球をしていた子の多くは、社会人になるとやめてしまいます。草野球や遊びで続ける人はいても、野球で食べていく子は、ほんのひと握りです。
だとしたら、周りと比べて焦るより、野球の楽しさを見つけて続けていける癖を、小さいうちからつけてあげたい。
比べるなら、周りの子ではなく、少し前のわが子と。
前はできなかったことが、いまできるようになっていないか。そこに目を向けるだけで、見え方はずいぶん変わります。
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少年野球はまだ比べる時期じゃない
少年野球の年代は、まだ野球になる手前の段階です。周りの子と比べて一喜一憂するには、正直まだ早いと思います。



前はできなかったことが、いまできている。そこに気づいてあげられるのは、いちばん近くで見ている親御さんです。



少し前のわが子と比べる。それなら、できそうです。
まとめ
センスは、生まれ持った才能とは違います。できない理由と直し方が分かっていること。
いまやっていることに楽しさを見つけられること。
そして、分からないことやできないことを、周りの人に助言を求められること。
野球センスのある子とは、そういう子だと、私は考えています。
- センスと才能は別物。才能は生まれ持ったもの、センスはあとから育つもの
- 結果よりも、子どもがどう考えてプレーしているかを聞く
- 教えるのは、子どもから聞いてきたとき。それまでは見守る
- センスのある子は、分からないことやできないことを周りに助言を求められる子
- 少年野球は、まず楽しむこと。比べるなら少し前のわが子と
だから、いま「うちの子はセンスがないのかも」と感じていても、焦らなくて大丈夫です。
周りの子と比べるより、わが子がどう考えてプレーしているのかを聞いてあげてください。
聞かれたときに答えられるよう、親は学んでおく。そして何より、野球を楽しめているかどうかを、見ていてあげてください。










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